仙台地方裁判所 昭和31年(行)8号 判決 1958年11月28日
主文
原告らの請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
事実
原告ら訴訟代理人は「一、被告宮城県知事が別紙第一、二目録記載の農地につき昭和二三年一二月二日附買収令書の交付をもつてした旧自作農創設特別措置法による買収処分及び別紙第一目録記載の農地につき被告佐藤三五郎に対し、別紙第二目録記載の農地につき被告西褜右エ門に対し、それぞれ昭和二三年一〇月二日附売渡通知書の交付をもつてした同法による売渡処分が、いずれも無効であることを確定する。二、被告佐藤三五郎は原告らに対し別紙第一目録記載の農地につき所有権移転登記手続をし、かつ右農地を引き渡せ。三、被告西褜右エ門は原告らに対し別紙第二目録記載の農地につき所有権移転登記手続をし、かつ、右農地を引き渡せ。四、訴訟費用は被告らの負担とする。」との判決を求める旨申し立て、その請求の原因として
一、仙台市東九番丁五九番の一、畑一町七畝八歩はもと伊達興宗の所有であつたところ、昭和二二年七月二日、同人が死亡し、その妻原告鞠子、長女原告登美子、二女原告恵美子及び長男原告貞宗が、これを共同相続して、その所有権を取得し、次いで翌二三年三月二日、原告らは右五九番の一の畑を、同番の一(畑二反一畝一四歩)一〇(畑四反七畝四歩)、一一(畑一反三畝五歩)、一三(畑六畝五歩)、一四(畑二四歩)、一五(畑三畝八歩)、一六(畑一反五畝)に、そのうち右五九番の一〇の畑を更に右五九番の一八(畑一反六畝七歩)、一九(畑四畝一〇歩)、二〇(畑一反四畝九歩)二一(畑七畝四歩)にそれぞれ分筆した。
二、ところで、被告知事は右五九番の一一、一三(別紙第一目録記載)同番の一八、二〇(別紙第二目録記載)及び同番の一九、二一の各農地につき自作農創設特別措置法第三条、第九条に基いて昭和二三年一二月二日附買収令書の交付をもつて買収処分をしたが、右第一目録記載の農地については被告佐藤に対し、右第二目録記載及び五九番の一九、二一の各農地については被告西に対し、それぞれ同法第一六条、第二〇条に基いて昭和二三年一〇月二日附売渡通知書の交付をもつて売渡処分をしており(但しこの売渡処分のうち右五九番の一九、二一に対する部分は昭和二五年五月一一日に取り消された)これに基き右第一目録記載の農地につき被告佐藤が、右第二目録記載の農地につき被告西がそれぞれ所有権取得登記を経由した。
三、しかしながら、右買収処分及び売渡処分は次の理由によつて無効である。
(一) 本件買収計画及び売渡計画は昭和二三年一月二〇日、仙台市原町南地区農地委員会が、はじめ買収及び売渡の時期をいずれも同年二月二日と定めて同時に樹立、公告縦覧に供した後、同年八月三一日に至り、宮城県農地委員会の承認を求めたものであるが、その承認を得られなかつたので、右地区農地委員会において昭和二三年九月一六日頃、右計画のうち買収及び売渡の時期を同年一〇月二日と変更し、買収計画については更に同年一一月二〇日頃買収の時期を同年一二月二日と変更したうえで、それぞれ公告、縦覧に供した後、売渡計画に対しては同年一〇月二日、買収計画に対しては同年一二月二日、それぞれ右県農地委員会の承認を受けたものである。いうまでもなく買収計画、売渡計画に対する承認は、それぞれ買収、売渡の時期が到来するまでになさるべきものであるから、右の如く買収、売渡の時期経過後になされた第一回目の承認申請に対し県農地委員会が承認を与えなかつたことは当然の措置というべきであり、従つて地区農地委員会としては改めて本件農地につき買収計画、売渡計画を樹立し直すべきものであつたといわなければならない。しかるに地区農地委員会は右の如く本件買収及び売渡計画のうち、買収及び売渡の時期を一部変更したのみで、県農地委員会の承認を受けるという弥縫的な手段を採つたのであるから、かような違法の手続に基いて被告知事がした買収処分、売渡処分も亦もとより違法、無効の処分というべきである。
(二) 本件買収処分が効力を生じる時、即ち買収の時期たる昭和二三年一二月二日当時、仙台市東九番丁五九番の一の農地は僅かに畑二反一畝一四歩であるにもかかわらず買収令書の記載によれば、当該地番の農地は畑三町四反九畝二八歩あるものとしてそのうちの六反歩を買収の対象としているが、かような買収は事実上の不能を内容とするものであるから、その効力を生ずるに由なく当然無効であり、かような無効の買収処分を前提とした本件売渡処分もまた無効である。
(三) 原告らの先代伊達興宗は昭和一〇年頃別紙第一目録記載の農地を被告佐藤に、別紙第二目録記載の農地を被告西に、それぞれ何時でも返還を請求出来るとの特約をもつて、無償で使用させたもので、右被告らは賃借権に基いて右農地を使用しているものではない。かような農地が自作農創設特別措置法にいわゆる「小作地」に右被告らが同法にいわゆる「小作農」にそれぞれ該当しないことはいうまでもないから右農地を買収の対象とした本件買収処分、右被告らを売渡の相手方とした本件売渡処分はいずれも無効である。
(四) 農地買収処分のなされたことを前提としてなさるべき売渡処分が本件では買収処分よりも先になされているが、かような売渡処分は法律上の不能を内容とするものであるから、もとより無効である。
(五) 被告知事は自作農創設特別措置法第一六条第一項同法施行規則第七条の二の三の規定に基き、昭和二三年八月五日附をもつて、本件農地を売渡保留地域に指定していたのに、その後本件売渡処分をなしたもので、かような法規違反の処分は当然無効である。
(六) 右に述べた違法の瑕疵が、かりに当該処分の無効をもたらす程の瑕疵ではないとしても、仙台市原町南農業委員会(昭和二六年法律第八九号に基き前記原町南地区農地委員会が改められたもの)は農業委員会法第四九条の規定に基き、被告知事の確認を得たうえで、昭和二七年三月二四日、本件買収計画、売渡計画を、同計画中にも内在する前記の瑕疵を理由に取り消しているから、後続処分たる本件買収処分、売渡処分も亦、効力を失つたものである。
四、以上の如く本件買収処分、売渡処分はいずれも無効であるから、本件農地の真正の所有者は依然として原告らである。よつて、原告らは(一)被告知事との関係において右買収処分及び売渡処分の各無効確認を求め、(二)被告佐藤に対しては別紙第一目録記載の農地につき被告西に対しては別紙第二目録記載の農地につき、それぞれ(イ)原告らの所有権の公示に協力すべき所有権移転登記手続を求めると共に(ロ)前記使用貸借契約を解約したこと(本訴状で右解約の通知をし、同通知は昭和三一年五月九日、被告佐藤、西に各到達した)に基いて右各農地の返還を求めるため、本訴に及ぶ。」と陳述した。
(立証省略。)
被告知事、西、佐藤の各訴訟代理人は、いずれも「原告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。」との判決を求め、答弁として、
「原告ら主張一、の事実中、仙台市東九番丁五九番の一、畑一町七畝八歩がその主張の如く分筆されたことは認めるが、その余の事実は不知。同二、の事実は全部認めるが同四、の事実は否認する。
同三、の(一)については、本件買収計画、売渡計画が原告ら主張の如く樹立、公告、縦覧に供された後、県農地委員会の承認を求めたが、これを得られなかつたので、原告ら主張の経過で買収の時期、売渡の時期を一部変更したうえ、県農地委員会の承認を受けるに至つたものであることは認める。しかしながら、右の如く買収計画、売渡計画に対する承認が、当初の買収、売渡の時期と定められた日時までに間に合わなかつた場合、原告ら主張の如く改めて計画を樹立し、最初から手続をやり直さなければならないものではなく、本件の如く計画中の買収、売渡の時期のみを一部変更し、その旨公告、縦覧に供したうえで爾後の手続を進めることも、もとより差し支えないところであつて、そこになんらの違法は存しない。
同三、の(二)について、仙台市東九番丁五九番の一の農地につき買収の時期当時における登記面上の地積及び買収令書記載の地積が原告ら主張のとおりであり、かつ買収の対象地が右令書記載の地積のうち六反歩となつていることは認める。しかしながら右五九番の一の農地は本件買収計画樹立当時、畑一町七畝八歩であつて(これを原町南地区農地委員会において誤つて三町四反九畝二八歩と表示したが)、そのうち六反歩を買収することは地積上もとより可能であつたところ、その後昭和二三年三月二日に至り、原告らにおいてその主張の如く右五九番の一の農地を分筆したが為に、登記面上の地積だけが、買収計画従つてこれに基いた買収令書記載の買収対象地の地積よりも少い形となつたのである。のみならず、右買収対象地は被告佐藤、西が数一〇年前原告らの先代興宗から賃借して以来、これを開墾し、梨畑として使用して来たものでその範囲は周囲の状況上明瞭に看取し得るところであつたから、右のような買収令書の記載によるも、右被告らが賃借していた特定部分を買収する趣旨であることは、原告らを含めた関係当事者には十分わかつていたのである。かような買収令書の記載が買収処分無効の事由とならないことは明らかである。
同三、の(三)の事実はすべて否認する。右に述べた如く、被告佐藤は別紙第一目録記載の農地を、被告西は別紙第二目録記載の農地をそれぞれ原告らの先代興宗より賃借し、梨畑として耕作を続けて来たものである。
同三、の(四)について、本件売渡処分が原告ら主張の如く買収処分よりも先になされたことは認める。しかしながら自作農創設特別措置法による農地の買収手続と売渡手続とは別異の手続であるのみならず、本件においては同時に買収、売渡の処分をする予定で手続を進めて来たところ、単なる事務上の手違によつて売渡処分が買収処分に先行するに至つたに過ぎないから、この故に売渡処分が無効になるいわれはない。かりにそうでないとしても本件買収処分が、原告らより法定期間内に取消訴訟を提起されることなくして確定した今日、原告ら主張のような売渡処分の瑕疵は既に治癒されたものというべきである。
同三の(五)について、被告知事が原告ら主張の如く本件農地を売渡保留地域に指定していたことは認める。しかしながら、これは指定日(昭和二三年八月五日)以後に売渡計画を樹立して農地売渡処分をすることを一時保留したにとどまり、本件の如く既に指定日前に樹立された売渡計画に基いて売渡処分をすることを妨げるものではない。のみならず、自作農創設特別措置法施行規則第七条の二の三の規定は、同法第一六条第一項の委任の範囲を越える無効の規定であるから、この規定に基きなされた右売渡保留指定も当然無効であつて、この点よりするも原告らの主張は理由がない。
同三の(六)の事実はすべて否認する。かりに原町南農業委員会が原告ら主張の如く被告知事の確認を得たうえで本件買収計画、売渡計画を取り消したとしても、既に被告知事において買収処分、売渡処分をなし手続の完結をみた後において、今更の如く右計画を取り消すことは、完結をみた手続の効果を一挙に覆滅し、売渡を受けて耕作に従事している被告佐藤、西の権利を剥奪する結果となるから、耕作者の地位を安定し自作農の急速且つ広汎な創設を企図せんとする自作農創設特別措置法の目的に背馳し、違法であつて許されない。
以上の次第であるから、本件買収処分、売渡処分はいずれも適法、有効である。と述べた。
(立証省略。)
(別紙目録省略。)
理由
仙台市東九番丁五九番の一、畑一町七畝八歩はもと伊達興宗が所有していたが、昭和二二年七月二日同人の死亡により、原告らがその主張の如く共同相続してその所有権を取得したことは成立に争がない甲第九号証、第一二号証の一及び弁論の全趣旨を綜合してこれを認めることが出来、しかして、翌二三年三月二日、原告らがその主張の如く右五九番の一の畑を同番の一、一〇、一一、一三、一四、一五、一六に、そのうち同番の一〇の畑を更に同番の一八、一九、二〇、二一にそれぞれ分筆したこと、右五九番の一一、一三(別紙第一目録記載)、一八、二〇(別紙第二目録記載)、一九、二一の各農地については昭和二三年一二月二日附で原告ら主張のような買収処分が、右第一目録記載の農地については被告佐藤に対し、右第二目録記載及び五九番の一九、二一の各農地については被告西に対し、それぞれ昭和二三年一〇月二日附で原告ら主張のような売渡処分がなされ、これに基き右第一目録記載の農地につき被告佐藤が、右第二目録記載の農地につき被告西が(右五九番の一九、二一に対する売渡処分は昭和二五年五月一一日取り消された)、それぞれ所有権取得登記を経由していることについては当事者間に争いがない。そこで、先ず右買収処分の効力について判断する。
本件買収計画は、昭和二三年一月二〇日仙台市原町南地区農地委員会において、はじめ買収の時期を同年二月二日と定めて樹立され、公告、縦覧を経た後、同年八月三一日宮城県農地委員会の承認を求めたものであるが、これを得られなかつたので、原告ら主張の経過で買収の時期のみを同年一二月二日と変更し、その旨公告、縦覧に供した後、同日附で県農地委員会の承認を受けたものであることについては当事者間に争いがない。ところで、買収計画に対する承認が買収の時期到来前になされることが好ましいことはいうまでもないが、だからといつて、右の如く右承認が当初の買収の時期到来までに得られなかつた場合、原告らの主張するように改めて買収計画を樹立し直し、最初からの手続を履践しなければ買収手続を進めることができないと即断することはできないのであつて、本件における如く買収計画中の買収の時期のみを一部変更し、その旨公告、縦覧に供したうえ、改めて県農地委員会の承認を受けることも、もとより差し支えなく、そこに原告ら主張の如き違法の瑕疵は存しないといわなければならない(因に、県農地委員会としては、当初(変更前の)買収の時期経過後になされた承認申請を許容してそのまま適法に本件買収手続を進めることもできたのである)。
次に、仙台市東九番丁五九番の一の農地が買収の時期たる昭和二三年一二月二日当時登記面上は畑二反一畝一四歩であつたが、買収令書の記載によれば畑三町四反九畝二八歩あるものとして、そのうちの六反歩を買収の対象地としていることは当事者間に争いがない。そして、原告らは右事実を捕えて、本件買収処分は地積上実現不能であるから無効であると主張するが、前記の如く右五九番の一の農地は買収計画が樹立された昭和二三年一月二〇日当時、畑一町七畝八歩あつて、そのうちの六反歩を買収することは地積上可能であつたが、その後原告らにおいて右五九番の一の農地を前記の如く分筆した為に登記面上の地積が買収対象地の地積よりも少くなつたに過ぎないから右主張は採用の限りでない。尤も、買収計画、買収令書において右五九番の一の農地の分筆前の地積が三町四反九畝二八歩と誤記されたことは被告らの自認するところであるが、成立に争いがない甲第一号証、乙第一号証の一、二、同第二号証、同第六ないし一〇号証、同第一三号証に証人鈴木惣志、三田春野の各証言を総合すれば、右地積は買収計画樹立当時の仙台市役所備付の土地台帳の記載に基いたものであるが、本件買収対象地は被告佐藤、西において、それぞれ遅くとも昭和七年以来、原告らの先代伊達興宗から賃借し、開墾して梨畑として使用を続けて来たもので、その範囲は周囲の状況上明確に知ることができる状態にあり、原告貞宗自身昭和二三年四月一六日、県農地委員会に対し、右対象地は梨畑となつているが、その周囲は住宅であるから住宅地として利用するのが相当である等の理由をもつて本件買収計画に対する訴願を提起していた事情にあることが認められるのであつて、右の事実によれば、本件のような買収令書の記載によるも、被告佐藤、西が右のように賃借して来た特定部分を買収する趣旨であることは原告らを含め関係当事者の十分に了知し得たところというべきであるから、これをもつて買収対象地が特定されていたと解するに妨げなく、従つて、かような買収令書の記載が買収処分を無効ならしめるいわれは存しないといわなければならない。
原告らは本件農地は被告佐藤、西が単なる使用貸借上の権利に基いて使用しているに過ぎないから自作農創設特別措置法にいわゆる「小作地」に該当しないと主張するが、使用貸借による権利に基いて耕作の業務の目的に供されている農地も「小作地」にほかならないことは、同法第二条第二項に明文をもつて規定するところであるから右主張はそれ自体理由がないのみならず、前記認定のとおり本件農地は被告佐藤、西において、それぞれ数一〇年来賃借権に基き、梨畑として継続的に使用収益を反覆して来たものであるから、同法にいわゆる「小作地」に該当すること明白である。よつて右主張は理由がない。
また、前記の如く本件買収処分は売渡処分よりも後になされたのであるが、この故に売渡処分の効力が問題となることはあつても、買収処分の無効をきたす理由はないというべきである。
更に、原告らは昭和二七年三月二四日、仙台市原町南農業委員会において、被告知事の確認を得て本件買収計画を取り消したから、後続処分たる買収処分も亦効力を失つた旨主張するので、この点について判断する。先ず成立に争いがない甲第四号証、第五号証、第一〇号証、第一一号証に証人菊地定吉、佐藤国雄の各証言を綜合すれば、仙台市原町南農業委員会は昭和二七年三月一七日に開かれた第一一回定例委員会議において、本件買収計画を売渡計画と共に取り消す旨の議決をしたこと、同会議には訴外佐藤国雄が原告鞠子の代理人として出席していたが、同訴外人は更に昭和二七年三月二三日右委員会より右会議議事録副本の交付を受けたことが認められる。ところでかような議決をもつて公告により効力を生ずる買収計画を取り消す行政処分といえるか否かはさておき、右農業委員会が買収計画を取り消すためには農業委員会法第四九条に基き、あらかじめ被告知事の確認を得ることを要するのであるが、本件全立証によるも右確認のあつた事実を認めることができない(尤も成立に争いがない甲第二ないし四号証に証人菊地定吉、佐藤宏順の各証言を綜合すれば仙台市原町南農業委員会は昭和二七年三月一〇日本件買収計画、売渡計画を取り消すべきものか否かにつき宮城県農地部長の意見を求めたところ、翌一一日右県農地部長から、買収計画に重大な瑕疵があれば取り消すべきである旨の回答に接したので、前記のように取り消す旨の議決をしたのであることが認められるけれども、県農地部長の回答をつて被告知事の確認があつたとみることはできないのみもならず、右のような当然の事理を表現したに過ぎない抽象的な回答をもつて、当該買収計画、売渡計画が取り消すべきものであることを確認したものと解し得ないことはいうまでもない)。しかして、かような知事の確認を得ない買収計画の取消は無効と解すべきであるから、原告らの右主張はこの点において既に失当である。
以上の次第で、本件買収処分の無効確認を求める原告らの主張はいずれも採用し難く、右買収処分は有効というべきであるから、これにより国が本件農地の所有権を取得すると共に、原告らは右所有権を喪失し、従つて原告らは本件売渡処分につきなんらの利害関害をも有しないから、その無効確認を求める法律上の利益を欠くものといわなければならない。従つて、また右買収処分、売渡処分が無効であることを前提として、被告佐藤、西に対しそれぞれ所有権移転登記手続と本件農地の引渡とを求める原告らの請求も理由なきに帰する。
よつて原告らの本訴請求はいずれも失当としてこれを棄却すべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九三条第一項を各適用して主文のように判決する。(昭和三三年一一月二八日 仙台地方裁判所第二民事部)